明治という時代は、今となっては あまりにも遠いものとなってしまいました。
特に日本は真実の近代史が見えにくく、まだまだ知らされていない事も多いと思います。

それでも遠い時代に想像を巡らせるのは楽しいし、時として説得力のある歴史解釈に出会ったときなどは、現代の矛盾や違和感に気付かされたりするものです。

今回は昭和初期に作られた、明治時代を描いた作品をまとめました。

【雁】西洋文明への、強い夢と憧れ

「雁」には、江戸時代から続く風習の闇と、文明開化への希望が描かれています。

いちど結婚に失敗した娘が、老いて働けなくなった父親の犠牲となり、妾に落ちていく悲惨な様子が「これでもか」というくらいに徹底していて、まったく救いがありません。

大学生との淡い恋だけが美しく描かれていますが、それも無残に引き裂かれてしまい、むしろ絶望感が増すばかりでした。

そんな娘とは対照的に、大学生は貧苦に喘ぎながらもストイックに学問に励み、やがて学士として成功して行きます。
青年の華々しさと娘の絶望的な人生が、わかり易いくらいにクッキリとコントラストを成しています。

そこには何か、儒教的な価値観への否定と文明開化への賛美という、当時の西洋文化への憧れが見て取れる物語でした。

【或る夜の殿様】エネルギッシュな野心が飛び交う、躍動の時代

「或る夜の殿様」には、成金商人の繁栄と、かれらの身分や地位への渇望が描かれています。

貨幣経済への移行で勢いを増す商人たちの「にわか」ブルジョアぶりは滑稽ですが、こういう激変の時代にお金の力で成り上がろうと血眼になる気持ちは、分からないでもありません。

この頃のように華族さまとか殿様という身分制度があって、なおかつ そこへ入り込むチャンスがありそうな時代なら、上昇志向に燃えるのは当然かもしれません。

長引く低迷に、野心も枯れ果てたような昨今から見たら、元気でギラギラした商人たちの姿は、ほとんど新鮮に感じてしまいますww

商人に限らず、政治改革やインフラの建設ラッシュなど「文明開化」に湧く、勢いに満ちてザワザワした空気が伝わってくるような物語でした。

【歌女おぼえ書】明治期のパワーの源泉に思いを馳せる

「歌女おぼえ書」は、明治期のお茶問屋を通して、明治の精神を表現していると思います。

表面上はとても静かながら、地下ではマグマが煮えたぎっているような、この時代の人の「内面の強靭さ」を感じる物語です。
そして その強さの源が「我欲の超越」であった事を、今に伝えていました。

一介の旅芸人であった ひとりの無力な女が、とある商家の主人に拾われて命拾いをします。
そして女芸人は、その主人が窮地に陥ったとき、その恩義に報いようとします。
さらに彼女の気骨を見込んだ若旦那もまた、無我の心境で彼女にすべてを託すのです。

ところが そこには、能力の有無、時間の経過や身分は関係ありません。
この三人の純粋な「のれんを守りたい」という強い願いと潔さが、最終的に奇跡を生むのです。

この映画を見ていたら、明治時代の日本の奇跡のような発展も、論理的に説明がつくようなものでは無かったような気がしてきます。
最古の国であり、長く続いた平和な江戸時代を経てきた日本には、相当なポテンシャルがあったとは思います。
とはいえ、植民地支配で収奪した富で発展した欧米列強に追いつくには、どう考えても不利な立場だった筈です。

それでも大正時代には、アジアで唯一の五大国入りを果たすにまで上り詰めたパワーの源泉は、日本の伝統的な文化にその秘密が隠されていそうです。
その一番大きな特徴は「結束力」の強さで、普段は忘れていても大きな危機が訪れると発揮されるという、日本人の遺伝子のような気がします。
家や村、組織などの「集団」を重んじるのが日本人の培ってきた歴史であり、それを国という まとまりにまで昇華させたのが、明治という時代の特徴だったのではないでしょうか。

国の在り方も、対外的に改めて『国体』という定義づけが行われた時期でもありました。

【ちょっと一息】明治時代にタイムスリップしたい!

明治期の豪奢な建築物の数々を見ていると、当時の発展の凄さを感じずにはいられません。
今となっては、この頃の建築物がほとんど残っていないのが、残念でならない気分です。


そして最近は、世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の存在が盛り上がりつつあるようです。

通称「軍艦島」でお馴染みの端島炭坑や韮山反射炉が有名ですが、いちばん行ってみたいのは「富岡製糸場」だったりします。
【世界遺産登録決定記念】の宿泊プランというのもありました。

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