映画に「癒やし」を求めたくなったとき、昭和初期の映画というのは うってつけの存在だと思います。

楽しかった思い出やレトロな雰囲気は、それだけで心が温かくなるような不思議な力を持っている気がします。

今回は、自然と肩の力が抜けて、優しい気持ちになっていく、ほっこりした映画をまとめました。

【まごころ】子どもたちの、大人への優しい眼差し

「まごころ」には、子どもたちの清らかな心が、大人の凝り固まった心を溶かす美しい情景が描かれています。

小学生の仲良し二人組の親同士は、昔ロマンスがあった事から、何やらギクシャクしています。

そんな大人たちのこだわりが面白くない事態を引き起こす中で、小さな娘たちの瑞々しい感性が、親たちを救済していく様子が何とも癒やされます。

子どもたちには、そもそも固定観念みたいなものがありません。

お婆ちゃんの厳しい言葉も、母親の気がかりな態度も、親友との物事の受け止め方の違いも、自分の都合に関係なく、現実として素直に受け止めて行きます。

そして彼女たちの感性は、頭でこねくり回したような理屈に左右されません。

母親の様子をじっと観察したり、逆に自分の直感を見つめたり、自然という大いなる力の恵みを受ける事で、自然と行動が決まっていく感じです。

そうすると、自ずと物事は穏やかで美しい方へと向かって行きます。

そして さらに清々しい気持ちになるのは、親たちがそんな娘たちの感性をとても信頼している所です。
子どもの優れた面を理解していて、素直に自分の否を認める親の謙虚さには、当時の人の高い知性を感じます。

【故郷】帰って行ける、温かい場所がある

「故郷」は、人間が最終的に帰っていく「心の故郷」の情景を思わせる物語です。

ヒロインは農家の娘ですが、人一倍勉強が出来たために、家族の協力を得て都会の大学を出させてもらいます。

ところが実際に身についた事といったら、贅沢な習慣や「実用性の無い」教養ばかりで、娘は帰省しても役立たずのいたたまれない存在になってしまいます。

犠牲になった兄は娘に辛く当たりますが、母親とまだ小学生の弟は、昔通りに温かく接してくれます。

ところが、じつは母親は大学へ娘を訪ねて行った折に「婆や」扱いされて傷ついた事があり、弟くんは姉の就職関係で、金持ちの同級生から除け者にされてもジッと我慢しているという背景があるのでした。

そして近所の叔父さんは、娘の高慢な態度をいさめたりもしますが、同時におどけて見せる茶目っ気を忘れないところが素敵です。

弟くんの賢さや、年老いた母親の何ともいえない味わい深さ、大きな心で包んでくれるような叔父さんのおおらかさが、のどかな農村風景の中に溶け込んで、昔ながらの「調和の世界」を見るようでした。

【この広い空のどこかに】誰かが見ていてくれるという心強さ

「この広い空のどこかに」には、長男の嫁として自営業を営む家庭に入った、新妻の奮闘が描かれています。

主人公のお嫁さんを取り巻く同居生活は、けっこう風当たりが厳しくて、途中メゲそうな場面も出てきます。

ところが素晴らしくコミュニケーション上手な男性たちが、彼女を守り励ます様子には、こころ癒やされます。

まず旦那さんは、誰よりもお嫁さんの味方です。
かといって彼女を叱る事も忘れず、同居家族の中で成長できるように協力を惜しまない態度は「愛すればこそ」という感じです。

それでも孤独を感じたお嫁さんが自信を持てなくなると、こんどは幼馴染の青年が不安な気持ちを落ち着かせてくれたりします。

そしてまだ学生の弟くんも、お嫁さんが姑や義理の姉から辛く当たられるのを見ると、彼女らをいさめて仲を取り持ってくれるのでした。

彼らの頼もしいサポートを得て、姑や義姉とお嫁さんとの信頼関係が生まれると、あとは自然と本物の家族になって行く様子は、渡る世間は鬼ばかりではない事を感じました。

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