「猟銃」は、仲良しの従妹の夫と不倫関係に陥ってしまう女性を描いた物語です。

事を荒立てないように うわべを取り繕い続けても、最後はドミノ倒しのように一気に崩壊して行く様子には怖いものがありました。

いくら衝突を避けても、問題に向き合う事を先延ばしにしても、傷は深くなるだけだという事が伝わってきます。
退廃的なムードが漂いつつ、秘めた狂気を感じる救いの無い作品でした。

情熱を秘めた美魔女、彩子(山本富士子)


彩子は医者である礼一郎(佐田啓二)の奥さんですが、
どこか神秘的な美しさを持つ古風な女性です。

彼女は幸せで穏やかな毎日を過ごしていましたが、
ある日突然その平和は破られます。

子連れの見知らぬ女性がいきなり訪ねてきて、
「この子は、あなたの夫の子供だ」と宣言したのです。

そのうえ女性は精神に異常を来していて、ロクに説明もせずに
子供を置いて、逃げるように立ち去ってしまいます。

その女性は、かつて看護婦をしていた頃
礼一郎と関係を持ってしまったのでした。

彼女は その後すぐに事故で亡くなるのですが、
彩子は自殺だと確信します。
そして あまりの事に茫然自失となって、完全に心を閉ざしてしまいます。

礼一郎がどんなに誠意を見せようとしても
頑なに拒み続け、離婚を決意します。
それでいて子供は自分が引き取るという行動は、少し謎な感じです。

一人になった彩子は、従妹のみどりの所へ遊びに行きます。

そこで みどりの夫・穰介(佐分利信)から大胆不敵に迫られ、
何故かあっさりその誘いを受けてしまうのでした。

何もかもお見通しの妻、みどり(岡田茉莉子)


みどりは、若くて世間知らずのお嬢さんです。
素直で大人しく、どこか自分に自信がないような女性で、
年上でお金持ちの穰介とは お見合い結婚でした。

穰介には何やら こだわりがあって、
「自分の世界」を持たない平凡な妻の存在が
物足りないように見えます。

ところが みどりに紹介された彩子に、
穰介はビビッと来るものがあったようです。
みどりに内緒で彩子を呼び出して、
臆面もなく「一緒に悪者になって欲しい」などと言います。

みどりと彩子は仲良しだというのに、
何故か彩子はあっさりと穰介を受け入れてしまうのでした。

ところが みどりは、早くから二人の関係を察知していました。
そして知っていながら一言も騒がず、ただただ黙認し続け、
徐々に彼女の生活は堕落して行きます。

みどりは病気した際に、
わざと彩子のかつての夫・礼一郎の病院に入院したりします。
そして彩子にお見舞いに来させて、明らかに彩子の顔色を伺っています。

こうして二人はお互いの腹の中を探り合いながら、
表向きは仲良しのままで貫き通すのでした。

突然、終止符が打たれる

彩子と穰介の関係は、8年ものあいだ続いて行きました。

ところがある日、彩子は元夫が再婚したという話を聞きます。
それを聞いた彼女は、意外なことに大変なショックを受けるのです。

彩子は夫と別れた後も、彼から何度も復縁の誘いを受けていました。
でも、その度に断っていたのは彼女の方です。

ところが彼女は「まだ彼から想われている」という事が
心の支えになっていたのでした。

そして みどりからは、とうとう「何もかも知っている」
という事を告げられてしまいます。

綾子は以前から「従妹に知られた時は、自分が死ぬ時だ」
と言っていました。

彩子は、かつて子供の母親が亡くなった時のように
自ら生命を断つのでした。

1961年公開

この映画は、ラストの展開が意外で驚きました。

彩子が、従妹を裏切ってまで付き合った穰介を
本当に愛していた訳でも無かったというのは、随分ふざけた話です。

とつぜん夫に隠し子がいた事を知らされたり、
相手の女性が自殺したというのは
確かにショックだと思います。

ただ、その後の彼女の行動は不可解でした。
自分が本当に傷ついたのなら、
仲良しの従妹に同じ思いをさせたり しないような気がします。

彼女は夫の過去の過ちを許さない反面、未練も断ち切れず
不倫をしていながら、相手への思いも中途半端です。

いい大人の女性なのに
ずいぶんと精神的に未熟だし、何だか混乱しています。

映画なので もちろんフィクションな訳ですが
こういう個人主義がまかり通る時代になったのかなァ・・・
と、何か殺伐とした印象を受ける作品でした。

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