ゴールドラッシュというと、遠いアメリカの話だと思っていた節があります。

ところが昭和の映画にも、ちょっと怪しげな「山師」が登場する事があります。
それも多くのケースが「年老いてなお家族に苦労をかけているお父さん」という像が多い事に、浮いた稼業という印象なのが見て取れます。

【花は偽らず】思いがけず成功するパターン

「花は偽らず」には、山師の父親を持つために、生活の糧として喫茶店を営む娘が出てきます。

この父親は、娘が心配するくらいの年齢のようで、大きな夢を追うには ちと遅すぎるように見えます。

それでも娘が細々ながらお店を切り盛りしているので、何とか生活は成り立っているようです。
ところが彼女はふとしたキッカケから、ある研究職の青年と出会い、父親の仕事の話になります。

それが偶然にも、青年の研究を実現するには「モリブデン」という物質が必要で、それは父親が掘り当てた物質と一致していたのです。

鉱物は、必ずしも金でなくても成功するケースもあるのかな?という、ちょっと興味深いエピソードでした。

【妻よ薔薇のやうに】辛抱強い家族に支えられる山師

「妻よ薔薇のやうに」には、奥さんが嫌で家を出たのか、どうしても ひと山当てたかったのか?どっちかよく分からないような父親が出てきます。

ひと山当てる為にと家を出た父親は、芸者をしていた女性とその子供たちとの、別の家庭を作って暮らしています。

父親を取り返しに直談判に行った娘には「いまに一山当ててやるから」と語りますが、この家庭の問題は、そこでは無いように見えます。

けっきょく正妻は、夫を自分の思う通りの生活に押し込めようとして、逃げ出されてしまった形です。
一方で内縁の妻は、不安定な夫の稼業をバックアップするのに苦労しながらも、親子4人で暮らす事を何よりも望んでいます。

父親の夢は一生叶わないかもしれないし、彼のライフスタイルも変わり様がない感じで、自然と最後は落ち着く所へ落ち着くのでした。

【元気で行かうよ】「今度こそ」が口癖になったら要注意

「元気で行かうよ」は、山師が止められず、娘に家計を支えさせている父親の物語です。

この娘は父親の「浮いた」稼業がとにかく嫌で、何とか諦めさせようと必死です。
「何もしなくても、家にいてくれれば良い」というのが、彼女の切なる願いです。

そしてなんと、この父親の見つけた山には脈がある事が分かり、彼の場合は本当に山を当ててしまいます。

ところが娘は、地質調査をしている知り合いに頼んで、分析結果の改ざんをしてくれるよう頼みます。
彼女は、父親の活動が持ち出しになるからでなく、心からこの稼業から足を洗って欲しかったのでした。

父親の浮つき加減もさることながら、娘の堅実度もなかなかのものです。

黄金の国ジパングは、遠い昔・・・

日本の金の採掘について調べてみると、有名なところでは江戸時代頃の佐渡金山あたりが出てきます。

ただ「中尊寺金色堂」に見られる金はもっとずっと以前のもので、日本の金は既に海外へ流出してしまったという話を聞いた事があります。

ところが、実は昭和にも「ゴールドラッシュ」が起こっていたようです。

北海道の「鴻 ノ舞(こうのまい)金山」が発見されたのは大正時代ですが、徐々に砂金堀りの人が集まってきて、昭和の頃には数万人規模の大きな町が出来るまでに賑わったというから、ちょっと面白い話です。

ただ映画に出てくる山師たちは、ギラギラしているどころか、どちらかと言えば皆どこか悲壮感が漂っています。
「元気で行かうよ」には、石炭を求めて悪戦苦闘する男たちの姿が描かれていますが、時代背景を考えると経済制裁による石油不足を、少しでもカバーしようとしているのでしょう。

物資の欠乏だけでなく、長引く戦争で戦費も嵩み、当時は経済的に相当逼迫していたと聞きます。
他の映画も公開時期が近いところを見ると、もしかして当時の窮乏と、海外に出て行けない状況の中で「何かせずにいられない」というような心境を表しているのかもしれないと思いました。

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