鎌倉は、深い山と開放的な海という、陰と陽のような2つの顔を持っているところが魅力ではないかと思います。

海は延々と続く広大な白浜と、江ノ島というインパクトのある開放的な空気が広がり、山側は静かな落ち着きのある「鬱蒼とした森」という感じです。
古都といっても賑やかなのは麓の方だけで、ちょっと山へ上ればとても静かなところです。

今回は鎌倉を舞台にした3つの作品から、それぞれ違った魅力を見出してみたいと思います。

【麦秋】共同生活が育まれるような環境

「麦秋」には、鎌倉に暮らす親子三世代の日常が描かれています。

家は昔ながらの日本家屋で、それぞれが個室に籠もる事なく、一家はワイワイと賑やかに暮らしています。
東京から訪ねてきた友達が「いいわね、空。私の家なんて、空無いみたいよ」と言ったりするのを見ると、環境や眺めも良さそうです。

海も近くて、子供たちは親と喧嘩した時のプチ家出のとき、女たちは家族に聞かれたくない会話をするときに、海岸へ出たりします。
ちょっと足を伸ばせば、大仏様を見に行ったり、鶴岡八幡宮へお参りに行く事も出来るという、文化的にも豊かな所です。

気になるのは「お勝手」と呼ばれるキッチンスペースで、食卓とは完全に分離した小さな部屋があります。
炊事はお嫁さんと未婚の妹の二人でやっているので、ここはほとんど二人の空間という感じです。
そのせいか、この二人は友達と姉妹の中間のような、とても仲の良いステキな関係を築いていて、環境が作る人間関係もあるかな、などと思ったりしました。

【青春怪談】時代の荒波と隔絶した場所

「青春怪談」には、男やもめと年頃の娘の、二人暮らしの家庭が描かれています。

この父親は役員報酬で生活できる身分の為、趣味に没頭するだけの隠居のような生活をしています。
地味ではありますが、見方によっては鎌倉の海岸で「ばあや」と暮らす引きこもり生活は、けっこう優雅に見えます。

ところが娘は父親と正反対の活動的な性格で、都会から遠く離れた使い勝手の悪い家を出たがっています。
彼女のボーイフレンドも徹底した合理主義で、彼の生活は殺風景で無駄がなくアグレッシブで、娘の家とは対照的な感じです。

確かに夢追い人にとって東京は魅力的かもしれませんが、ボーイフレンドの母親が鎌倉の昔ながらの暮らしに憧れ、盛んに羨ましがる様子に共感を覚えました。

【山の音】古都が持つ、光と影

「山の音」には、会社社長とその息子が、鎌倉の家から会社へと通う様子が描かれています。

父と息子そろっての、ゆったりとした出勤光景が優雅でした。
舞台は鎌倉といっても山の方で、その静けさまでが伝わってくるような森を背にした平屋建ての木造家屋も素敵です。

親子二代の生活風景もとても穏やかで、日本の伝統的な良さが残っています。
父親はまだ日があるうちに帰宅し、買い物帰りの嫁と一緒になったりしますが、冗談を言って彼女を笑わせたりする光景が和やかでした。

ただ、ここでの伝統的な暮らしは次の世代には受け継がれず、息子夫婦の代になると次第に壊れていく様が描かれていて、ちょっと寂しい気分になりました。

【ちょっと余談】観光旅行よりも、滞在したくなるところ

鎌倉は歴史的遺産が豊富な上に自然も豊かで、都会的な洗練も兼ね備えているという憧れの場所です。
とんぼ返りの観光旅行よりも、数日でも良いから暫く暮らすように滞在してみたい・・・というのが筆者の夢になっています。

ところが、どういう訳か鎌倉には良い旅館が見当たりません。
カジュアルなゲストハウスやB&Bだったり、ビジネスホテルみたいな所が多くて、ちょっと古都気分が醒めてしまいそうですww
一方めちゃくちゃ泊まりたくなるような素敵な宿は、1日2組しか泊まれないような所で、予約がずっと先まで一杯でした・・・。

それでも執念で探していると、逗子まで足を伸ばせば良さそうなお宿がありました。
「松汀園」という国家公務員・共済組合の保養所ですが、一般の人も泊まる事ができます。
住宅街の中の静かな立地で、建築年代の違う大正館と昭和館があります。
レトロな日本家屋と素敵なお庭が、気に入ってしまいました。

歩いてすぐ逗子海岸にも出られますが、ここは由比ヶ浜のような広大な白浜ではなく、こじんまりとした感じです。
逗子は鎌倉の隣の駅なので、ここなら好きなだけ鎌倉を堪能できそうです。

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