監督：島津保次郎
出演：佐野周二、上原謙、佐分利信
失業中の男・周二が窓辺で溜息をついている。失業してもう長い。同棲している彼女からは、別れを言い渡されている。そんな二人の朝の風景…。
彼女：あんた、こっちへいらっしゃいよ。食べてちょうだいよ。待たせたんで怒ってんの？
周二：怒ってなんぞいるものか。
彼女：じゃあ、召し上がれ。よう、どうしたの？
周二：胸が、いっぱいで…。
彼女：食べられないの？そんな深刻な顔するからだわ。
周二：だって、深刻にならざるを得ないじゃないか。キリストの最後の晩餐のように、これが最後の朝飯になるのかと思うと…。
彼女：私の心尽くしが恨めしいって言うんでしょ？
周二：そうさ。
彼女：私は、あなたの前途を祝福するために、お互いが別れ別れになっても、心だけは結ばれていたい、そう思って…。
周二：それは、君は原告だし、僕は被告の立場なんだから…。親切にされればされるほど悲しいことだ。
彼女：あなたが悲しい以上に、私は悲しいんです。園江さんをご覧なさい、ホールを辞めてドレスメーカーになってるし、ミッチーはスターになって随分貯めたし、花子さんは貯金したお金で株をやってるし…。
周二：君は、僕がいるために、貯金もできないって言いたいんだね？
彼女：そうなの。
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