「南風」の後半は、いよいよ切羽詰った菊子が、次々と辛い境遇に見舞われて行きます。

ところが人生が辛くなるにつれ、自分を助けてくれる強い味方も現れてきます。

そして こういう人たちとの出会いによって、冷たい「刹那的」な生活から、地に足のついた温かい未来へと向かっていく様子が描かれていました。

結局生活は環境が作り、環境は人が作るものかもしれないと思いました。

優しく頼もしい友達、敬子(水戸光子)

妊娠している菊子は、事務の仕事を得て、何とか自活しようとします。

そこには年が同じくらいの敬子がいて、親しみを込めて接してくれるのでした。
「名字なんかじゃなく、名前で呼び合いましょうよ。あたし敬子」
「あたし菊子」
「ウフッ」
ってな感じで、たちまち仲良しになってしまいます。

菊子は、仲良しの敬子と同じアパートの一室に移り住みます。

そして間もなく、菊子は一人で赤ん坊を生みます。
敬子が何かと面倒を見てくれますが、これから先どうなるのか、菊子には何のアテも無いのでした。

堅実でおおらかな男性、道雄(佐分利信)

敬子と共に、何かと菊子の心配をしていた道雄は、彼女が赤ん坊を生んだ事を聞いて、最初は驚きます。

道雄は菊子の境遇を見るに見かねて、子供の事について徹に掛け合ってくれるのでした。
ところが徹が養育費の支払を拒絶するのを見て、道雄はますます菊子を放っておけない気持ちになって行きます。

就職したての道雄は、菊子と赤ん坊と、3人で家庭を築く決心をします。
ところが、問題なのは道雄の実家です。

運命の分かれ道

菊子に会うために、道雄の母親が訪ねて来る事になりましたが、彼女は何も事情を知らないのです。
菊子は子供の事を打ち明ける勇気が持てず、赤ん坊を一時的に預ける事にします。

ところが赤ちゃんは突然病気になり、そのまま亡くなってしまうのです。
子供の事を知った母親は、この結婚を許すことは出来ないと判断し、田舎へ帰ろうとします。

道雄は、母親にだけは認めて欲しいと思っていました。
彼は母親を送っていく道すがら、今までの経緯、そして彼の決意が固い事を伝えます。

母親は道雄の気持ちはわかるものの、事情が事情なだけに、考え込んでしまいます。
ところが、たったいま赤ん坊が死んでしまった事を打ち明けられると、彼女はハッとします。

そして、なんと「子供を亡くした気持ちは、わたしにもわかる」
と言うのです。

そして道雄の
「いま自分という拠り所すら失ってしまっては、彼女は生きていられないでしょう」
という言葉にも、同意してくれたようです。

それまでずっと笑顔を見せなかった菊子ですが、戻ってくる二人を見つけると、満面の笑みを浮かべるのでした。

1939年公開

映画には、当時の色々な様式の「住まい」が出てきます。

徹の下宿や叔父さんの家など、日本家屋は明るくて広々とした感じですが、アパートは狭くて怖い感じです。
むき出しのコンクリートが寒々しく、室内はやけに薄暗くて古ぼけた印象です。

菊子の入った部屋などは、屋根裏部屋のような殺風景さで、とても若い女性の部屋とは思えません。
敬子が布で覆面をして、燃料(たぶん石炭)をすくっている姿にも驚きます。

道雄と一緒になってからの家は、和洋折衷な明るい開放的な感じで、家の作りが住んでいる人の心境を現しているようでした。

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