「新女性問答」は、弁護士を目指す女学生の奮闘と友情を描いたメロドラマです。

この物語は、かなり無理のある話だと思いました。
いかに事故であれ、加害者の弁護を被害者の妹が担当するというのは、人の感情をあまりにも考慮しない話だと思いました。
そもそも事件の当事者の肉親が、被告の弁護をするというのも、ずいぶん無理な話です。

とはいえ このストーリーに貫かれている「寛容」と「和解」の精神には、考えさせられるものがありました。
一度は憎しみ合い、絶縁したりしながらも、相手が窮地に陥れば寛容の心を示し、お互いの立場が理解し合えたら和解する様子からは、優しさよりも むしろ力強い勇気を感じます。

日本には昔から「水に流す」という言葉があるくらいで、敵相手でも「完膚なきまでに叩きのめす」文化ではない事を思い起こさせてくれます。

主人公と友達との間で「父親が芸者に騙されたから、芸者全体を憎む」とか「家族に芸者がいる友だちとは絶好」というような対立が起こりますが、確かに彼女たちは住む世界が違うという感じがします。
法律を学ぶ近代的な娘たちと、まるで封建時代のままのような芸者たちの、同じ時代とは思えない世界が混在する様子は、不思議な光景でした。

若き女性 法律家、トキヨ(桑野通子)

時代(トキヨ)は法律を学ぶ女子大生で、親友7人組とともに苦しくも楽しい学生生活を送っています。
しっかりしていて優秀で心優しく、模範生という感じの彼女ですが、その影には強力な味方の存在があります。

それは芸者をしている姉・お葉(川崎弘子)の存在です。
トキヨの父は人に騙され、無縁の死を遂げました。
その無念を果たすため、お葉は自分を犠牲にして、優秀なトキヨを弁護士に仕立てあげようと思ったのでした。
それは父の敵討ちというよりは、こういう気の毒な人たちを救いたいという想いからです。
そんなお葉に対し、トキヨは後ろめたいような気持ちを抱いています。

そんなお葉に、悲しい出来事が起こります。
お葉には将来を約束したも同然の、幼馴染の村川(広瀬徹)がいました。
ある日突然その村川が、別の女性と結婚するからお葉とは別れたいと言います。

そして、なんとその相手はトキヨの一番の親友・路子(三宅邦子)だったのです。
トキヨは村川を諦めてもらおうと路子にお願いするのですが、ケンモホロロに断られてしまいます。
そして、その事が原因でトキヨは路子と絶好する事になるのでした。

博愛的な心を持つ姉、お葉(川崎弘子)

お葉は、どこまでも人を許す事のできる性格の持ち主です。
トキヨの為に芸者になっても後悔せず、むしろ本望だと頑張り通します。

おまけに損得づくで自分を捨てた村川を、憎むどころか最後まで母親のように心配し続けます。
村川は逆玉を狙って路子と結婚したものの、義父が亡くなった事で事態は一変し、生活にも困るような有様になってしまいました。
路子が妊娠している事を知らなかったとはいえ、もう用はないと言わんばかりに蒸発してしまいます。

それを知ったお葉は、心を痛めます。
しっかりした男性に再婚の話を持ちかけられて、せっかく幸せを手に入れられるチャンスを掴んでも「村川が幸せになるまでは独身を貫く」などと言うのでした。

まさかの展開

路子は一人で子供を育てる事になり、大変な思いをしています。
一方 村川は相変わらずで、今度はお葉の所へ戻って来ようとします。
お葉は村川を突っ跳ねた上で、路子を救って欲しいと哀願します。

お葉の願いを聞いて村川は路子を訪ねますが、路子は既に村川を見限っていました。
路子はヨリを戻そうと言う村川を追い返そうとしますが、村川は何を思ったか「それなら子供は貰っていく!」と赤ん坊を誘拐しようとします。
そのとき偶然、手元に村川の持っていたピストルが見え、パニックに陥った路子はとっさに引き金を引いてしまいます。
ところがその瞬間、ちょうど仲裁に訪れたお葉が縦になり、お葉は打たれて死んでしまうのです。
お葉は死ぬ間際に「村川は真からの悪人ではない、仲直りして欲しい」と言い残すのでした。

その頃トキヨは司法試験に合格し、晴れて弁護士となっていました。
そのトキヨに対し、親友7人組の仲間たちが、路子の弁護に立って欲しいとお願いしに来ます。
トキヨは最初こそ頑なに断りますが、親しい人たちの「それがお姉さんの遺志だろう」という言葉にほだされ、とうとう路子の弁護を引き受けるのでした。

1939年公開

当時の「近代的な」女学生の様子が面白くて、新鮮でした。
彼女らのオッサンみたいな喋り方や、やたらと合唱したりする様子を見ると、それが当時の学生スタイルだったのかもしれません。

そして、いくらドラマとはいえ ちょっと飛躍が過ぎると思ったのは、裁判の場面です。
ヒロインは思いっきり感情論の答弁をしたり、自分の立場まで利用してしまいます。
これでは いかにフィクションとはいえ、裁判というものについて誤解を生んでしまいそうです。
本当の戦前の裁判はどんなものだったんだろう?と、ちょっと興味が湧いてきました。

それからこの映画で印象的だったのは、ロケ撮影の美しさです。
中でも空襲で壊滅する以前の隅田川界隈の様子には、今とは全く違う趣があります。
重厚で壮麗なのに、どこか艶めかしいような木造建築が並んでいます。
川沿いの道には柳の並木があり、レトロな橋と対岸の家々の風景がステキでした。

【ちょっと余談】印象的な場面の風景を探して

姉のお葉が弁護士の男性に求婚されるシーンは、松林から見える海と浜辺の風景が印象的でした。

撮影場所を探しても分からなかったのですが、そっくりな場所を見つけました。
三保松原(みほのまつばら)という所で「日本新三景」とか「日本三大松原」の一つとされる景勝地だそうです。

ロケ地ではないかもしれませんが、ここの松林から見える浜辺は映画の場面に似ています。
すぐ近くに「羽衣ホテル」というお宿もありました。
庭園が松林とつながっているようなので、好きなだけこの景色を満喫できそうです。

「鎌ヶ崎」というスポットがあって、ここから見る富士山は神々しいような美しさです。
心から清められそうな景色を見に、いつか行ってみたいと思いました。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。