「浅草四人姉妹」は、4人姉妹のいる賑やかな家庭の、昔ながらの下町情緒が描かれたアットホームな物語です。

なんだか修学旅行の夜のような、楽しい雰囲気の映画でした。

近所の人々は家族の延長みたいに親密だし、家の中はいつもワイワイガヤガヤと賑やかです。
悲しみも悩みも、仲間たちとの間で吸収されて行くような温かさがあります。

皆なかなかコミュニケーション上手で、こういう人とのつながりの場を失ってしまた現代人とはだいぶ様子が違います。
人間関係の煩わしさのようなものは一切描かれておらず、ざっくばらんで調和が取れている様子は、どこかホッと癒やされる部分がありました。

優秀で男っぽい、美佐子(相馬千恵子)

浅草の小料理店の夫婦には、四人姉妹がいていつも賑やかです。
長女は女医、二女は芸者、三女は服飾関係のお勤め、末娘は国会議員志望と、それぞれ結婚に落ち着くつもりはありません。

長女の美佐子は姉妹の中でも一番のしっかり者で、どこか男っぽい性格です。
病院での同僚・田中とは看護婦たちも認めるような仲なのですが、いつもツンツンしているので相手には少し恐れられているようです。

病院では創立記念のパーティーが催される場面があるのですが、それが病院内で患者まで参加して催される様がすごいです。
本当にこんなファンキーな光景が実在したのでしょうか?

このパーティーで田中と踊った美佐子は、珍しくうっとりした気分になります。
ところが、ここで出てきたセリフが「これは、どういう気持なのかしら?」です・・・。

美佐子は優秀な女性ですが、どうやら色恋に関しては得意分野では無いようです。
せっかく距離が近づいた翌日の朝もいつものようにツンツンしてしまい、田中としては取っ付きにくい様子です。

素直で色恋の達人のような三女、千枝子(杉葉子)

三女の千枝子はデザイナーを目指してブティックで働く、明るく素直な女らしい娘です。

千枝子はある日、盲腸の手術で美佐子の病院を訪れ、田中に担当してもらう事になりました。
それがキッカケとなり、田中が好きになってしまいます。

千枝子は退院したくないと言ったり、病院に田中を訪問しに来たりして、美佐子に怒られます。
ところが悪びれない千枝子は「田中さんにアプローチしても良い?」とか「お姉さん大丈夫?」などとストレートに承諾を求めます。
そんな風に素直に切り出されると、素直じゃない美佐子は今度も強がってしまいます。

姉の了解も得られた千枝子は、積極的に田中にアタックします。
田中が告白しやすいように誘導する技は、姉との比ではありません。
女性らしい素直さと、可愛げのある押しの強さで、あっという間に田中を落としてしまいます。

恋のバトルもさらりと対処

一方 美佐子はそんな事になっているとはつゆ知らず、ようやくダンスパーティーの夜から迷い続けた挙げ句に、ようやく自分の気持ちに素直になる事ができました。

何か言いたげだけど躊躇している田中に、期待しながら「何か話があるの?」と切り出します。
ところが、田中の話というのは妹と結婚させて欲しいという結婚の許しを乞う相談だったのです。

内心ショックを受けたものの、爽やかに承諾してあげる所は美佐子の立派な人柄を表していて素敵です。
傷心の美佐子は、お隣の中学生の男の子に「私の恋人にならない?」と軽口をたたき「年が違いすぎらあ」とお断りされたりします。

結局4人姉妹のうち2人が失恋し、無事ゴールインしたのは一人だけという結末になるのでした。

1952年公開

当時の浅草の人々が、繋がり合って親しみ深く生活する様が描かれています。
ストーリーに劇的な展開はなく、あくまでも日常の些細な出来事が綴られていて、当時の下町のコミュニティはこんな風だったのかなぁ、という想像を掻き立てられるような映画でした。

娘たちはそれぞれに自立を目指していて、戦後急激に台頭してきたフェミニズムのようなものが伺えます。
それに対して、親が持ち込んだお見合いへの否定は徹底していて、娘たちが見向きもしないだけでなく、お見合いの相手が滑稽で愚かな男として描かれています。

4人姉妹の2人が失恋するという展開は、当時の極端な男女比で女が余っていた社会事情を表しているのかもしれません。

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