「隠し砦の三悪人」は、戦国の乱世に生きる敗残の姫たちの逃避行を描いた冒険活劇です。

この物語は、スカっとするような痛快な時代劇でありながら、じつは現代に通じるメッセージが含まれていると思いました。

そして、この時代と現代との大きな「隔たり」として最も印象的だったのは「火祭り」の光景です。
神秘的で激しく、人々の一体感と力強い信仰心が伝わって来る・・・熱い場面!でした。

「人の命は火と燃やせ
虫の命は火に捨てよ
思い思えば闇の夜や
浮世は夢よ」

という歌の詞には、当時の人々の死生観が現れているようでした。

勇ましく忠義深い侍大将、真壁六郎太(三船敏郎)


戦国の乱世の中、隣国との戦に破れた秋月家の侍大将・真壁六郎太は平民に化け、隠し砦に身を潜めています。

彼はたった独り残された世継ぎの雪姫を連れて、同盟国である早川領へ抜けるチャンスを伺っている所でした。

そこへ太平と又七という、二人の男が迷い込んできます。
二人は早川領の百姓で、戦に参加しようとして秋月領へ来たものの間に合わず、国境封鎖で帰るに帰れない状況です。

ところがこの二人は、六郎太が隠していた秋月の軍資金の存在を嗅ぎつけてしまいます。
六郎太ははじめ彼らを切り捨てようと思いましたが、二人の持つ「強欲」のパワーを見込んで、仲間に引き入れる事にします。

大義のためとはいえ、六郎太が彼らの粘り強さを試す理不尽さを見ていると、二人がつくづく可愛そうになります。
ところが彼らの金に対する執着と、百姓の体力というのは並大抵のものではなく、そのエネルギーは武士から見ても合格点に達したようですww

同盟国「早川」領との国境は固いが、敵国の「山名」領へ抜けてから「早川」領‎に入るのは、いくらか易しいのではないか?
というアイデアも、又七の思いつきでした。

こうして六郎太と姫雪と太平と又七の4人は、意を決して敵陣へと潜入するのでした。

宿命を背負った男勝りの姫、雪(上原美佐)


男子の無い秋月家に生まれた長女の雪は、女性に生まれながら世継ぎとして雄々しく育てられた、ベルばらの「オスカル」のような姫です。

彼女は敗戦でただ一人の世継ぎとして重責を背負い、敵を欺くための身代わりとして、妹を犠牲にさせられるという悲劇に見舞われます。
それでも決して人には涙を見せず、家臣や六郎太にも厳しくあたる一方で、彼らを信頼して悠々と構える品格を持っているのでした。

そんな気の強い雪姫ですが、人品がバレるのを避けるため「唖(おし)」を装い、百姓たちには素性を隠したままの敵陣潜入という事で、事態は相当ややこしくなります。

そもそも薪の中に隠した軍資金「黄金二百貫」を背負いつつ、姫を連れた道中は、地雷畑を歩くようなスリリングさで、見ている方がハラハラしてしまいます。
一行は百姓たちの裏切りに遭ったりしながら、何度もピンチに見舞われます。

ところが姫は、どんな困難な状況に置かれていても、自国の民を見捨てる事はしません。
途中立ち寄った旅籠で、敵国に捕まって売られた娘に出会った姫は、無茶振りと分かっていながら彼女を買い戻します。

こうして娘が加わって5人になった一行は、次の日には早速 敵兵に見つかってしまいました。
乱闘の末、二人を取り逃がしてしまいまいます。
その兵を追って敵陣へ突入した六郎太は、山名の侍大将・田所兵衛(藤田進)と出会うのでした。

田所は六郎太とは旧知のライバルであり、誇り高い貫禄を漂わせる勇猛果敢で快活な男です。

敵陣の中、田所は二人の一騎打ちで勝負の決着をつける事を望みます。
研ぎ澄まされた技と高い精神力を感じる戦いぶりは、魂のぶつかり合いのような緊張感を醸していました。

勝負は六郎太が勝利を収めますが、彼は田所の命まで取る事を望まず、その場を立ち去ります。
そして いよいよ彼らは、早川との国境に迫るのでした。

絶体絶命のときも、自分らしく生きる

姫に救われた娘も加わり5人となった一行は、その後も雨に凍えたり山を越えたりと、苦難の連続でした。
そして銃弾の飛び交う中を逃げ惑ううちに、百姓二人とははぐれてしまいました。

そして命からがら国境付近へたどり着いたものの、とうとう待ち伏せていた敵兵に見つかって捕らえられてしまいます。

明日は打首という夜、3人が捕らえられている牢の中に、田所が現れます。
彼は顔にひどい傷を受け、暗く絶望的な表情で、かつての輝きを失っていました。

聞けば六郎太を取り逃がした罪で、主君に弓杖で打たれ、罵りを受けたのだといいます。
そして田所は、勝利した六郎太が自分の命を救った事を恨んでいました。

ところが これを聞いた雪姫は、怒りを顕にします。
命を救われた恩に恨みを抱く田所を叱り、しくじりをした部下に屈辱を与えた主の愚かさを指摘するのでした。

そして自分自身は、目的を果たせなかった六郎太に対して感謝の言葉を残します。

「この数日の楽しさは、城の中では味わえぬ。
装わぬ人の世を
人の美しさを、人の醜さを
この目でしかと見た。

これで姫は、悔いなく死ねる。」

この姫の言葉からは、良い所も悪い所もすべて ひっくるめた上での「人類愛」のようなものを感じました。

1958年公開

この映画は、戦後揺れに揺れた「日本のお国柄」について、再認識をしているような気がしました。

物語の設定がそれぞれメタファーのようで、おおっぴらに議論できないテーマが語られていると思いました。

まず秋月家の存在は、敗戦後も何とか「国体」を維持した日本の歴史を彷彿とさせます。

そして戦には勝ったけど幸せになれなかった田所は、超格差社会と戦争業に苦しむアメリカ人を見ているようでした。

さらに雪姫が口をきかず、活動するのはもっぱら六郎太という図式は、日本の統治形態を表していると思います。
雪姫と助け出された娘の関係は、天皇と国民のつながりをイメージする所がありました。

日本は明治憲法を制定したとき、ある言葉の翻訳で困ったそうです。

それは「日本帝國ハ萬世一系ノ天皇ノ治(シラ)ス所ナリ」の「治ス」という言葉です。

今となってはあまり馴染みのないものとなってしまいましたが
「天皇が民の心や願いを自らの心に映し取って治める」
という意味を持つそうです。

ところが、これは欧米列強には無い概念でした。
日本では、西欧流の権力者が領土や人民を支配するのは「うしはく」という言葉で区別されています。

それで翻訳に困って仕方なく「統治」と英訳したものの、国内向けには「天皇の知らす国」と同義だヨ、という解釈書を付ける事で広く受け入れられたそうです。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。