「美貌の都」は、町工場の女工が一度はシンデレラ・コンプレックスに陥り、紆余曲折を経て現実に目覚めていく成長の物語です。

美人が故に自堕落な男に目を付けられ、早い段階で大人にならざるを得なかったヒロインの苦悩が描かれていると思いました。

ビジュアルが良すぎるというのも両刃の剣で、その価値を上手に扱えない人にとってはむしろ害になるという事を教えてくれるような物語でした。
恵まれると人は怠惰になり、結局は苦労からしか学べないというのが真実のような気がしました。

そして厳しい忠告をしてくれる人は少なく、やはり家族や親友は有り難い存在なのだと気付かせてくれるような、苦味を効かせた真実に迫る作品でした。

自分の可能性に夢を見る娘、千佳子(司葉子)

千佳子は、町工場で働く女工です。
千佳子の家庭は、父親が亡くなってから相当な貧乏暮らしを強いられています。
ところが千佳子はとても美人で、工場の上役には目をかけられているしボーイフレンドもいます。

あるとき仕事中に目が痛くなった千佳子は、偶然居合わせた副社長の植松一彦(木村功)に病院へ連れて行ってもらいます。
それをキッカケに、一彦は何かと千佳子にアプローチをしてくるようになりました。
プレゼントをくれたり、ホームパーティーに誘ったり、楽な仕事まで紹介してくれます。
一彦が紹介した仕事は家から離れた場所にあったため、千佳子は家を出る事にします。

ところがそんな生活は、千佳子を一彦の思い通りにしやすい環境だったようです。
一彦は結婚を約束し、二人は結ばれて千佳子は妊娠する事になります。

何か過去のある女、由紀(淡路恵子)

千佳子のボーイフレンド耕一(宝田明)とその先輩・良吉(小林桂樹)の馴染みの飲み屋に、由紀という女性が新しく入ってきました。
良吉はたちまち由紀を好きになってしまいますが、なんだか由紀には過去があるようです。

良吉と耕一の話を聞いているうちに、由紀は耕一のガールフレンドだった千佳子が、一彦と付き合っている事を知ることになります。
実は由紀はむかし一彦の家で女中をしていて、一彦と恋に落ちて妊娠し、家族の反対に遭って別れさせられた経験があったのでした。

由紀は良吉からプロポーズされていましたが、自分の過去の事で彼に遠慮しています。
そして一彦から受けた仕打ちを思うと、千佳子の行く末が気になってしょうがないのでした。

キッパリと過去を清算した由紀

由紀は思い切って一彦にコンタクトを取ります。
そして実際に会ってみると、一彦は由紀と別れた事を後悔していて、もう一度寄りを戻したいと言います。

そんな一彦を見て、由紀は千佳子に「彼とは別れた方が身のためだ」と忠告しに行きます。
でも、そう言われて千佳子が「はい、そうですか」とアッサリ承諾する筈もなく、由紀は3人で会う事で、一彦が千佳子の事を想ってはいないという証明をせざるを得ませんでした。

由紀と寄りを戻すつもりの一彦はその正体を現し、千佳子に手切れ金をやって別れようとします。
千佳子はいつも男性がチヤホヤしてくれる事に慣れていたため、こんなこっぴどい仕打ちを受けたのは初めてです。

そして由紀は、千佳子が過去の自分と重なったようです。
一彦に見切りをつけ、良吉と一緒になる決心をするのでした。

1957年公開

映画には、アメリカのようなホームパーティーが出てきます。
かつては日本にも、ああいうパーティーが存在したのでしょうか?
来賓たちが千佳子と耕一を品定めしたり、一彦の婚約者が別の男とイチャついていたりする描写は、いかにも欧米風の退廃的なブルジョア像といった感じです。
ずいぶんと良くない習慣が輸入されてしまったものです。

ただヒロインが、最後にはこういう世界に背を向けて、地に足のついた生活に戻っていくという筋なので、やはりここが日本人の底力であり、まだちゃんと魂が残っている感じがしました。

ところが物質やお金ばかりを求める風潮は今も根深く、大切な事を追求したり、深く物事を考える力はこの頃からあまり変わっていないような気がします。

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