「続・夫婦百景」は、様々な夫婦の在り方を描いた夫婦の群像劇です。

映画には、女性の方がひと回りも年上のカップルや、収入の無い夫が主夫をしている家庭、仕事の時間が逆転したすれ違い夫婦や、収入が乏しい生活でもバンバン子供を作ろうとしている若い夫婦など、色々なタイプの夫婦が紹介されています。

夫婦の在り方だけでなく、女同士の友情の在り方もどこか男っぽくて、価値観が多様化して開放的になっている時代の空気を感じました。

理想の家庭を追い求める新妻、ノリ子(浅丘ルリ子)

OLのノリ子は、まだ新婚夫婦でいながら夫とすれ違いの生活を送っています。
同僚からは「数寄屋橋」と呼ばれていますが、このネーミングは当時流行った「君の名は」というすれ違いドラマの有名なシーンに出てくる橋の名前から来ています。

夫の仕事は「駐留軍の夜間交換手」という海外向け電話の夜間業務で、昼間の仕事をしているノリ子とは朝、入れ違いになるという生活です。

旦那さんが どうしてそんな仕事をしているのかというと、ノリ子は早くマイホームを建てて、良い生活がしたいと思っています。

夜間の電話交換手はお給料が良いし、貯金が出来るまでは無理してでも、共稼ぎで頑張るつもりでいるのでした。
ところが最近では、お互いにこの生活に疑問を感じ始めているようです。

普段は目立たない地味な叔父、蒼馬(大坂志郎)

ノリ子の叔父・蒼馬は、売れない絵本作家です。

彼は普段は執筆の傍ら主夫を務めていますが、奥さんは婦人雑誌の編集長でバリバリのキャリア・ウーマンです。

ところが最近、蒼馬は「児童文学賞」という賞を受賞したのでした。

それを知ったノリ子は、ご相伴にあずかろうと叔父を訪ねてきます。
普段はチマチマと生活している蒼馬ですが、賞金を手にした事で急に大きな気分になり、二人は夜の街へと繰り出します。

ところがダンスホールに行ってみると、そこにはノリ子の夫が、楽しそうに後輩の女の子とチークダンスを踊っているのを発見してしまいます。
ノリ子は叔父の事など どうでも良くなり、2人はそこから別行動になるのでした。

雨降って、地固まる

蒼馬はいったん家に帰ったものの、家を留守にした事で空き巣に入られてしまい、奥さんと大喧嘩になります。
そして奥さんに「出ていけ!」と言われた事で、再び夜の街へと遊びに出かけ、今度は一人だったせいで賭博へ連れて行かれたり色々な冒険をし、しまいには警察沙汰を起こすに至ります。

こうして蒼馬は、一晩とことん楽しんだ事で、だいぶ気が晴れたようです。
そして色々な事件があった事で、奥さんは今まで自分が知らなかった蒼馬の一面を見る事が出来ました。
奥さんは、たとえ収入は無くても、蒼馬が頼りになる存在だという事にようやく気が付いたようです。

一方ノリ子は、やはりすれ違いの生活が夫に浮気心を起こさせる原因を作ったのだと思うようになりました。
ようやく夫の夜間の仕事を諦める決心が付き、かといって貯金もしたいという気持ちも捨てきれない事から、叔父の家に居候させてもらうという思いつきを実行する事にしたのです。

ずいぶん不思議な同居生活ですが、このフランクな叔父夫婦の元でなら、若い二人も案外気楽に暮らせるのかもしれません。

1958年公開

夜の街に繰り出すシーンには、興味深いものがありました。
ダンスホールや歌声喫茶、サウナから賭博の様子など、当時の娯楽やカルチャーを垣間見ることができます。

日本も高度経済成長期に入り、右肩上がりのイケイケな空気が伝わって来るようです。

一方で、当時はまだ在日米軍が多く存在していて、一般人にとっても身近な存在だった様子が描かれています。
ノリ子の夫が駐留軍に勤務していたり、駐留軍の影響で派手好みになった、という空き巣狙いの夫婦が出てきました。

もうひとつ時代を感じさせるエピソードとして「産児制限」というキーワードがありました。

かつて1947年から1949年にかけて、第一次ベビーブームと言われる大変な出生率の上昇がありました。
この時期に生まれた世代が、いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる人々なのですね。

そして それと平行するように、産児制限とか家族計画という運動が行われていたようです。

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