ヨーロッパを旅していてレストランなどに行くと、必ずと言っていいほど現れるのが「流し」の歌うたいです。

これも はじめの内は新鮮で楽しいけれど、行く店行く店に次々と現れると、だんだん食傷気味になってきますww
チップ制というのも日本人には馴染みがなく、これがまた何だか居心地が悪い感じがしてしまいます。

ところが日本にも、昔はこういう習わしがあった事が昭和の映画を見ると分かります。
その中にはけっこう子供がいたりして、労働基準法のある今から見ると不思議な光景です。

今回は、そんな日本の「流し」の様子を描いた映画をまとめました。

【乙女ごころ三人姉妹】底辺的な悲壮感あふれる「流し」

「乙女ごころ三人姉妹」には、子供に「流し」をさせて生活する母親が描かれています。

映画に出てくる娘や少女たちは、夜の町へ出ていって居酒屋やカフェーで歌を歌ったり、三味線を弾いたりしてチップを得ています。
居酒屋にはタチの悪い酔っぱらいがいるし、カフェーはちょっといかがわしい雰囲気で、とても未成年の出入りするような雰囲気ではありません。

今なら子供がそんな場所へ行く事じたい有り得ませんが、この頃の映画には子供の働く光景がよく出てきます。
娘たちは店から「レコードをかける」という無言の拒絶を受けたり、酔っぱらいに絡まれたりと散々な様子です。

とはいえ、それでも一家がその稼業で何とか生きている所を見ると、そこそこの需要はあったという事かもしれません。

【泣蟲小僧】けっこう楽しい居酒屋の風景

「泣蟲小僧」には、居酒屋へ唐突に「流し」の一家が入ってくる場面が描かれています。

太鼓や琴を用いた民謡の演奏がけっこう本格的で、店は大騒ぎという感じになります。
子供のボーカルがすごい高音で、突き抜けるような響きの歌声は威勢がよく、今から見ると新鮮な光景で楽しくなります。

歌っているのは小さな子供で、大人が年齢を聞くと「15」と答えますが、どうみても小学生くらいにしか見えません。

そして今度は「流し」の伴奏で、客が歌い始めたりします。
これがひどいオンチで、いい気分になっているのは本人ばかりという感じです。
ところが店内のお客さんたちは、全く意に介していない様子なのが、これまた自由な空気です。

【銀座化粧】演目がバラエティに富んだ「銀座のバー」

「銀座化粧」には、美空ひばりバリの歌唱力の子供が出てきます。

この映画は戦後の銀座が舞台で、小さなバーの様子が描かれています。

そこへ、物売りや流しが次々と入ってきます。
小学生くらいの少女が、本格的な歌唱力で歌う様子が出てきますが、これは当時では「モダン風」な演目のようです。

他にも浪花節みたいなのを演るおじさんがいたり、お客が下手くそな「清元」を大声でうたい、迷惑した他の客と喧嘩になりそうになる場面が笑えます。

妙にほっこりとした雰囲気で、戦後のノリとしてはちょっと遅れている感じの「レトロ・バー」の様子でした。

ライブからバーチャルへ

映画に出てくる流しは、レコードやラジオの普及が進む中での「先細り感」がありました。

やたらと子供が登場するのは「子供なら、客もひいき目に見てくれるだろう」というギリギリ状態の目論見だったのかもしれません。

いまは飲食店などに出向いて飛び込み演奏する事なんて出来ないし、会場などを調達するのもかなり敷居が高くなってしまいました。

一方で動画配信して広告収入を得たり、ライブ配信して投げ銭をもらったりと、電波を利用した活動の幅が広くなってきたのも確かです。

最近は急激に人が集まる機会が減って「個の時代」に突入した感がありますが、能動的でいさえすれば、物理的な制約を越える事でかえって繋がりやすくなっている面もあると思います。

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