「隣の八重ちゃん」は、女学生の八重子がお隣の大学生に抱く「淡い恋」を描いた物語です。

子供でもなく大人とも言えない思春期の男女の様子がアットホームな感じで描かれていて、楽しい気分になります。
八重子は、大学生と対等に話す様子はなかなか大人っぽいのですが、弟君と接している時などはまだまだ子供で、無邪気さも残る微妙な年頃です。
何をやっても楽しく笑ってしまうような様子は、懐かしい人生の一コマを思い出させてくれます。

八重子の制服とか、お姉さんの大正ロマン的な着物の着こなし、バックに流れる情感たっぷりのレトロな歌声、銀座や郊外の風景など、オシャレで優雅だった時代の様子を見せてくれる作品です。

青春を謳歌する女学生、八重子(逢初夢子)


女学生の八重子は、ちょっとおませな女の子です。
お隣の家とはとても親密で、近所付き合いの域を越えている感じですが、特に大学生の長男・恵太郎(大日方伝)は何かと気になる存在のようです。

あるとき八重子が家に友だちを連れてきたら、ちょうどお隣の恵太郎が留守番をしている所でした。
女友だちも恵太郎も、お互いにかしこまったり動揺したりするのですが、八重子はその様子を目ざとく察知してツッコミを入れたりします。

“私以外の女性に惹かれたら承知しませんよ”と言わんばかりの、すでに女房的なノリが存在する様子などは、もう完全に“女”です。

影のある美魔女的な姉、京子(岡田嘉子)


そんな八重子には、姉が一人います。
姉の京子には、ちょっとこのアットホームな2つの家庭には見合わない何か“毒っぽい”魅力があります。

夜遅く突然、泣きながら帰ってきた様子はただ事では無さそうです。
聴けば夫と上手くいっておらず、たまりかねて飛び出して来たと言います。
親は何とか元の鞘に収めようと思うのですが、よくよく聞いてみると相手の仕打ちもひどいのでした。

京子には戻る意思は全くなく、カフェの女給をでもやって自活するから別れたいと言い張ります。

意外なライバルに翻弄される八重子

既婚者と女学生という立場の違いもあり、八重子は姉の相談に乗ってあげられるような力量はまだ無いようです。

毎日泣いてばかりいる京子の様子を見かねて、恵太郎は励ましたり相談に乗ってあげたりします。
二人の親しげな様子に八重子は気が気ではありませんが、かといって二人の深刻な様子に入っていける勇気がありません。

八重子は恵太郎を連れ出そうと映画に誘いますが、恵太郎は弟やお姉さんも誘ってあげようと言います。
仕方なく4人で銀座に出かけましたが、その場は大人の京子が仕切ってしまい、八重子はだんだん添え物のような気分になっていきます。

京子は大人でジェントルマンな恵太郎の事が気に入ってしまい、露骨にモーションを掛け始めたから大変です。
さすがの八重子も、この積極的で妖しい魅力を持つ姉には脅威を感じ始めるのでした。

1934年公開

この映画で時代を感じたのは、郊外にある閑静な住宅地の、隣同士の家庭が繰り広げる「ご近所付き合い」の様子です。

母親や子供らはもちろんの事、父親たちも仲良しで、しょっちゅう家に呼んだり呼ばれたりして晩酌をする仲です。
家を閉め出された大学生が、お隣へ行ってご飯を食べながら留守番をするという寛いだ様子は、和やかで心の豊かさを感じました。

かつては これが日本の平均的なご近所付き合いだった事を思うと、ずいぶん世知辛くなってしまったものだと思います。

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