昔の映画を見ていると、東京湾を木造の渡し船が走っていたという光景が出てきます。

今の東京からは想像もつかないような風情ある風景で、地下鉄が通る現在には不必要と思いつつも「こんなのがあったら良いのになあ」なとど思ってしまいます。

今回は東京湾の渡し船が映っている映画をまとめ、当時のちょっと不思議な様子をご紹介します。

【吹けよ春風】「東京見物」がイベントだった頃

「吹けよ春風」は、タクシーの運転手さん視点で、東京の1953年当時の町並みが描かれています。

船じたいは出て来ませんが、船着き場の様子が映し出され、対岸のエリアから東京見物に来たという子ども達が登場します。
東京湾を隔てているという事で、かつては相当な距離感があったという事が伝わってきます。

【泉へのみち】海を隔てて隣り合う「格差」

「泉へのみち」は、豊かで近代的な都市部と、貧しい佃島あたりのギャップを感じさせる様子が描かれています。

東京の編集者に勤めるちょっとアッパー育ちの娘が、スラム街の可愛そうな娘を訪ねるシーンに「渡し船」が登場します。
東京湾を隔てて、豊かな東京の街と昔ながらの貧しい地区が、クッキリ分かれている感じが伝わってきました。

【乙女ごころ三人姉妹】生きた「広告」の様子

「乙女ごころ三人姉妹」には、昭和10年時点の「渡し船」の様子が描かれています。

戦前の映画になると、渡し船の中の状況もちょっと変わっています。

渡し船は今で言う地下鉄やバスみたいな、交通機関として利用されていました。
その船の中で、薬の営業の女性が効能を述べたり、サンプルを配ったりしています。

電波が使えない頃の、アナログな営業活動の光景が新鮮でした。

今となっては「非日常」的な光景

映画に出てくる「渡し」を調べていたら、それは東京湾ではなく「隅田川の渡し」と呼ばれていた事がわかりました。
そういえば、確かに今も水上バスが隅田川と東京湾を繋いでいますね。

それも、その航路は1本や2本ではなく、主なものだけでも28本もの「渡し」が存在していた事を知り、驚きました。
東京湾が埋め立てられておらず、大きな橋も無かった頃は、船が交通機関として地下鉄網のような役割を果たしていたのですね。

そして最後の「渡し」は、1966年(昭和41年)に廃止された「汐入の渡し」だったそうです。

映画に映し出される木造の小舟は、まだ現役感があって、今では見られない新鮮な光景を今に見せてくれます。

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