「家族会議」は、株式相場での経済戦争と恋愛バトルを絡めた、東西合戦の物語です。

まだ人が手動で売買取引をしていた証券取引場の「立会場」の様子や、証券会社では黒板にチョークで株価を書き込んでいるアナログさが新鮮です。

そして それだけに、混乱する市場の様子も感情的で生々しいものがありました。

実体経済を伴わない大資本による経済撹乱は、今に始まった事ではないのが よく分かります。

そして裕福な商人のお嬢さんの豪快さや男前な気質も、ちょっと戦前の女性像を塗り替えるようなモダンなものでした。
車を買ったり特注の別荘を建てたりするだけなら ただの浪費家ですが、しまいには仲買店のオーナーになるという活躍ぶりには驚きます。

ヘナヘナ系のお坊ちゃま君、高之(佐分利信)


重住高之は兜町にある仲買店の若き当主ですが、おっとりしていて ちょっと優柔不断な感じの青年です。

彼は最近、会社の大番頭の娘である春子に、なかば強制的にお見合いをさせられています。
高之には想っている女性・仁礼泰子(及川道子)がいるのですが、その人とは結ばれない因縁があるのでした。

高之の父親は昔、泰子の父である大手仲買店の仁礼に攻撃され、自殺に追い込まれました。
そのうえ高之の店は仁礼の資本で成り立っているような有様で、自分の立場に歯がゆい思いをしています。

高之は泰子を愛していながらも、一方ではやっぱり一緒にはなれない気分なのでした。

春子は高之にとってお姉さんのような存在ですが、彼女は泰子を警戒している様子です。
二人の仲を裂くため、しきりに株屋仲間である梶原の娘・清子(桑野通子)とのお見合いをプッシュしてきます。
そして清子は高之に会うと、たちまち彼が気に入ってしまいます。

そこで立ち上がったのが、泰子の親友である忍(高杉早苗)です。
忍は密かに高之を想いながらも泰子との仲を取り持ち、結婚を成就させてあげようと奔走します。

ところが肝心の泰子は消極的だし、高之も煮え切らない態度で、忍が間に入らなければ終わってしまいそうな危うさなのでした。

イケイケの叩き上げ番頭・京極(高田浩吉)


仁礼の秘書・京極は、当主にも見込まれた、やり手で辛抱強い実力派です。

仁礼からは泰子との結婚を勧められていますが、彼は泰子が高之を好きなため面白くありません。

そんな京極は最近、製紙会社の吸収合併を任されています。

仁礼は大阪製紙の大株主ですが、東京製紙の大株主に働きかけて過半数の株式を取得した上で、株価を下落させて乗っ取ろうという計画です。

ところが高之の店は東京製紙の大株主で、東京製紙の株が暴落すれば破滅という立場にあるのでした。

こうして京極は、泰子をめぐるライバルとしてだけでなく仕事の上でも敵となり、火花がバチバチし始めます。

おまけに高之の見合い相手である清子の梶原家もまた、東京製紙の大株主でした。
京極は梶原から東京製紙の株を譲り受ける交渉に出向き、清子に計画を嗅ぎつけられてしまいます。

清子は高之に秘密を漏らし、彼はすんでの所で命拾いする事ができました。

ところが高之は、やっぱり泰子を諦めることができません。
清子との縁談は断わってしまい、彼女は敵側である二礼の側へと回る事になります。

東西株屋のガチ勝負

清子のお陰で一度は救われた高之ですが、彼にはまた次の試練が待ち受けていました。

梶原を取り込んだ二礼は、こんどはいち企業の買収に留まらず、市場全体を揺るがすほどの「売り」による猛攻撃をかけ、東京株式市場は大混乱に陥ります。

兜町の仲買店がバタバタと倒れて行くなか、高之は家財を一切投げ売った上に忍の親の力を借りて、一世一代の勝負に出る決断を下します。

2つの家の争いが、東京の市場を巻き込んで大きく燃え上がっていくのでした。

1936年公開

こういう企業の買収劇は、ウォール街のイメージが強かったのですが、戦前の日本でも同じように行われていた事を改めて知りました。

次々と他者を飲み込んで、資本が雪だるまのように膨張していく流れは、今に始まった事ではなかったようです。

コツコツと実業に勤しんで会社を発展させても、いずれは大きな網で釣り上げられてしまうのがオチという感じでしょうか・・・。

おまけに最近は、日本の企業が国外に買われるという洒落にならない状況で、いい加減 株式会社の制度から足を洗った方が良いのではないか?とすら思います。

株式市場も通貨の壁も薄くなり、また植民地時代に逆行を始めたような、終わりの始まりを予見するような恐るべき「食い合い」の様子が描かれた、あまり古さを感じない作品でした。

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