「母親とは、無償の愛でもって子供を全面的に支えてくれる存在」
というのが一般的な認識ですが、
実はそうとは言い難いような「大人になりきれない母親」
もいるのが現実のようです。

最近は「毒親」なんて言葉もありますが、
母親が子供に及ぼす影響は、絶大だと思います。

ところが、そんな母親を持った子供は不幸なのかと思いきや、
意外と親よりもしっかりしたりと悪い事ばかりでもないようです。

今回は、ちょっとしょうがない母親を持った子供が、
苦労する様子を描いた映画をまとめてみました。

【晩菊】身勝手な母親を見習い、思いのままに行動する娘

「晩菊」は、かつて花柳にいた女たちが、年老いてただの「オバちゃんと」なってしまった様子を描いた物語です。

かつては人気者の芸者だったという母親を持つ幸子は、けっこう苦労が耐えません。

この母親はほとんどアル中で、ギャンブルや男も大好きな「いつまでも大人になりきれない」ような女です。
「お金は使うためにある!」というのがモットーで「殖やす殖やす」と言いながら、ギャンブルにふけったり、男に貢いだりしています。
いちおう掃除婦をして働いてはいますが、友達の間借りしている部屋に又借させてもらいながら、その日暮らしを続けています。

そして何よりも困った所は、とにかくお酒が好きな事です。
そもそも芸者でいられなくなったのもお酒が原因で、身体だけでなく精神も衰えて、まともに仕事が出来なくなってしまったのでした。
今では成人した娘にお小遣いをせびるのを、大いに当てにしています。

ところがある日突然、娘が結婚したいと言い出します。
というか もうほぼ決まっているようですが、これを聞いた母親は大反対します。
「まだ早い」とか「もっと目が肥えてから良い男を見つけないと」と言いますが、逆に娘に「じゃあ、お母さんはどうだったのさ」と突っ込まれてしまいます。

自分は未婚の母で、今や貧乏のどん底のような生活をしている訳で、このツッコミに反論の余地がありません。
娘は相談したかった訳ではなく、あくまでも「報告」をしただけでした。
その後、母親の不在時に荷物をまとめに来て、旅行にでも行くようにあっさりと嫁いで行ってしまいます。

娘が出て行った事を知った母親は相当ガックリ来たようですが、それでも彼女は「生きたいように生きる」という姿勢は崩さず、これから先も面白おかしく暮らしていくつもりのようです。

【妻よ薔薇のやうに】反面教師の母親に学ぶ娘

「妻よ薔薇のやうに」は、父親が不在の、母と娘の二人暮らしの家庭が描かれています。

この家の娘・君子は屈託がなくしっかりしていて、家庭に問題があるようには見えないくらい精神的に安定しています。

ところが娘とは対照的に、両親はけっこう しょうがない人たちです。
父親は金鉱を当てるのに夢中になり、山へ行ったっきり家に帰ってこないばかりか、芸者と別の世帯を持つようになってしまいます。

そして母親は母親で、娘に働かせて自分は俳句に凝っているという有様です。
娘一人に家計の心配をさせている上に、自分はけっこう散財したりする子供のような母親なのです。

君子はいい子なので「母さんは悪い人ではないのだけど・・・」と、しょうがない人と思いつつも、母親の人格を否定したりはしません。
父親の事も恨んだりせずに、いつか帰って来てくれると信じています。
とはいえ、さすがに痺れを切らした君子はいよいよ父親の所へ赴いて、無理にでも連れ帰ろうと決心するようになります。

ところが実際に乗り込んで行って、相手の女性に会ってみると、彼女は思っていたのとは全くの別人でした。
彼女は心から父親を愛していて、父親も子供たちも幸せそうな様子です。
おまけに君子の家に仕送りをしていたのは、父親ではなく女性の方だったのです。
髪結の仕事をしながら、自分の子供の事を差し置いて、君子に学費を送り続けていたという事も知らされます。

君子は、別れてしまった両親の復縁には失敗しますが「自分の家庭はしっかりやるわ!」と自信を持って宣言します。
でも彼女なら、本当にそうなりそうな気がしました。


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