「女の座」は、今ではほとんど見られなくなった大家族の物語です。

腹違いの兄弟たちや、夫が亡くなって独りで子供を育てているお嫁さん、失業して居候する娘夫婦など、覚えきれないくらい大勢の家族が出てきます。
核家族や単身の世帯が増えた今から見ると、賑やかでちょっと楽しそうにも見えます。
色々な事情を抱えた家族が実家に集結し、モメたり時には協力し合ったりする様が不思議で面白い光景でした。

こういう大勢の家族をまとめていく主婦は大変そうで、めいめいが自分勝手な事ばかり考えています。
特に年少の姉妹は一番呑気で「良いところへお嫁にいく」事で頭がいっぱいという感じです。

ただそんな姉妹も、世代の違う兄弟やその結婚相手など交流相手が多いせいか、二人ともコミュ力が高いと思いました。

望まれた方へ素直に行く、夏子(司葉子)


夏子は、二番目の奥さんの娘です。
お嬢さんタイプで、綺麗で性格も素直で控えめな、男性が放っておかないタイプです。

最近 就職先の会社が潰れたので家でブラブラしていますが、ちょうど適齢期という事もあって「再就職より結婚を考える」という感じになっています。
そこで取り敢えず「どうせ手が空いているなら」兄の経営するラーメン屋で、店番を手伝わされる羽目になります。

小さなラーメン屋には似つかわしくない美貌の夏子が入ってくると、店ではたちまち評判になってしまいました。
夏子はそこで、店の常連客である気象庁勤めの青年・青山(夏木陽介)と出会います。
彼女は、ちょっと彼に好意を持ったように見えます。
今なら気象庁といえば相当に安定した職場ですが、この頃のお役所勤めはずいぶん貧乏そうで、青山は「結婚なんて無理~」という感じです。

そんな折、夏子に縁談が持ち上がります。
それも、顔見知りの男性に見初められての縁談です。
この相手は大手企業のエリートで家柄も良さそうな、お嫁入り先としては申し分が無さそうです。
何となく、夏子は青山と見合い相手のどっちを選ぶかで迷う事になります。

司葉子さんの出演している映画


行きたい道を切り開く、雪子(星由里子)


末娘の雪子も容姿に恵まれていて、当時は「美人でなきゃ務まらない」とされていたらしい映画館の切符売りの仕事をしています。

雪子は明るくて積極的な性格で、兄のラーメン屋によく出入りしています。
雪子も青山が気に入っているようですが、ただ「結婚の相手としてはどうか?」と品定めをしている様子です。
やたらと夏子に青山との付き合いを勧めたり、青山に対しては「夏子は青山さんが好きらしい」と勝手に吹聴したりします。

雪子はどうやら青山が好きなのですが、彼に結婚願望が全く無い所や、世帯を持てる収入を得ていない事が気になっている様子です。
ところが本人に直接アタックするのは決まりが悪いので、代わりに姉の夏子を使って青山の真意を探ったり、結婚に対する意識改革を図ろうとしているようなのです。
それにしても、本当に美人の姉が気に入ってしまったらどうするのでしょうか?
モテ子の考える事はよくわかりません(^^;

それぞれの道へと旅立つ姉妹たち

雪子は遂に、青山と夏子の二人をお互いの名で呼び出して合わせるという、よくわからない行動を取ります。
雪子の差金で二人っきりで会う事になった夏子と青山は、何だか困った様子です。

青山は雪子から「夏子に縁談が持ち上がっているから慌てろ」と聞いているのですが、夏子に対して「慌てる理由がない」とはっきり言います。
それを聞いた夏子は、青山に自分への気が無い事が分かるのです。

青山はそこで、こんど富士山の観測所へ転勤が決まった話をします。
青山はこの転勤を「自分に向いている」と喜んでいる様子で、本当は南極や月にも行ってみたいんだ、という壮大な夢を語ります。
ところが夏子には そういう冒険的な志向は無いらしく、内心「ついていけない・・・」と思ったようです。

結局 夏子は、お見合いに応じる事にしました。
雪子がしつこく「どうして青山さんじゃだめなの?」と聞くので、夏子は逆に「本当は青山さんが好きなくせに」とツッコミを入れます。
雪子は散々かき回した挙げ句に「バレてた?ごめんね」だけで済んでしまうという、美人姉妹の不思議な駆け引きでした・・・。

この姉妹に共通しているのは「何が何でもこの人でなくちゃ」といった男性に対する執着のようなものが無い所です。
こういう女性たちは、相手が余程おかしな人でもなければ、結構どこへ嫁いでも幸せになれてしまうのかもしれないと思いました。

成瀬巳喜男さんの監督映画


1962年公開

この物語に登場する ちょっとアイドル的な美人姉妹は、屈託がなく伸び伸びと育っている様子が印象的でした。

ただ素直に見える彼女たちも、実はそれなりに考えているようで「どこへお嫁に行けば幸せになれるのか?」という事を真剣に探っています。
「好き」だけで結婚して苦労している姉たちや、好き嫌いが激しすぎてオールドミスになっている姉などのリアルな姿を見て、いろいろと学習しているのかもしれません。

家族は人間が一番最初に経験する小さな社会であり、家族が多ければそれだけ学ぶ機会も多いような気がしました。
とはいえ、最も計算しているように見える一番末の娘も、結局は条件よりも直感を優先させている所が、当時の結婚観の流れを表していると思いました。


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