親友の夫と不倫関係になってしまうという寡婦の物語です。

奥様向けのメロドラマの走りのようなストーリーで、この時代としてはちょっと珍しいと思いました。

ただ、今のドラマのように不倫関係に陥ってしまう途中経過や、修羅場の後の“和解”のような描写が一切無く、ほとんど事実を追っただけの雑な作品だったのが残念な所でした。
これでは人の心の機微というものが伝わらず、ただの“不道徳な二人”で終わってしまいます。

不倫の恋をしてしまった親友は罪人のような扱いを受けるし、不倫騒動のあった夫婦も特別な進展もなくただの現状維持になってしまいます。

ちょっと男っぽい好人物な妻、邦子(千葉早智子)

邦子は、明るくて結構しっかりしているし、心も優しくて特に文句のつけようがないような女性です。

ところが夫の水上信也(高田稔)は、コーヒーの入れ方が下手とか靴が磨けていないとか、朝から何かと口うるさく文句を言います。
ただ、彼は家を出てから「厳しく言い過ぎたかな?」と思い、わざわざ電報を打って「ちょっと言い過ぎました」みたいな伝言をしたりします。

スマホの無い時代は大変だなァと思いますが、ちゃんとフォローするあたり、信也は少し我儘ながらも妻を大切に思ってはいるようです。

そんな邦子の元へ、親友の加代(入江たか子)の夫が急死したという知らせが来ます。
加代の夫は邦子の叔父の息子であり、邦子が紹介をして結婚に至ったといういきさつがあります。
邦子は加代が独りで困っているだろうと思い、信也を加代の元に派遣する事にしました。

魅力的な寡婦の親友、加代(入江たか子)

加代は美しくて女性らしく、行き届いた女性でした。
信也は彼女の素敵さに、内心グラッと来たようです。

ところが邦子の叔父は相当な変人で、息子が亡くなったというのに葬儀にも現れませんでした。
そして、小さな子供を残して寡婦となった嫁に対しても全く責任感を示しません。
嫁の事を”女”と呼ぶところなどは、いくら昭和初期とはいえ さすがに違和感を感じます。

しょうがなく信也が間に入って色々と世話を焼くしかなくなり、加代たちは北海道の叔父の所へ引き取られて行く事で一応は落ち着きます。
ところが変人の叔父との同居や、北海道の僻地という環境は、加代にとっては辛いものでした。

邦子は加代の苦境を聞くうちに彼女が気の毒になり「いったん自分の家に来て、東京で自活や再婚の道を考えてはどうか」と提案します。

”猫に鰹節”状態になってしまった良人

加代が邦子の家に来てから、信也は何だかソワソワして来ます。
邦子は夫も加代の事も信じ切っているので、二人を残して実家へ親の看病をしに行ったまま、しばらく過ごしてしまう程です。

ところが二人は、いけない事と知りながらお互いに恋愛感情を抱いてしまいます。
そのうちに夫の態度が変わってきて、初めて邦子は二人が付き合っているのを知る事になります。

加代はやっぱり邦子に悪くて身を引くのですが、信也は会社を辞めてしまうし、加代を追いかけて家出までしてしまいます。
そしてその事が叔父の耳に入り、叔父は加代への制裁として子供を取り上げてしまいます。

子供は加代の生き甲斐であり、加代は会うことすら許されない子供の後を追いますが、そこで話は終わってしまいます。

1937年公開

この作品は原作も読みましたが、当時としては革新的な内容で、完成度も高いと思いました。
現代のメロドラマも、この辺りの作品からヒントを得ているような気がします。

どうやらこの映画は、前編と後編から成る作品を総集編として大幅にカットしたもののようです。
どうりで、何だかおかしな展開だと思いました。

ラストも、映画では「不倫をした女性が幸せになる」という筋書きが許されなかったのか、原作とは違うものになっていました。

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