「丘は花ざかり」は、新入社員の妹と専業主婦の豪華な美人姉妹が織りなす、爽やかな「青春系」ドラマです。
東京の山の手の、文化的な生活を送るキラキラ系な男女の生活が垣間見れて、ちょっと楽しい気分になる物語です。
家庭に入って大人しく暮らしていた奥様に、夫とは全く違うタイプの男性との出会いがあったり、自分たちでダンスパーティーを催したりする様子は、今から見るとけっこう優雅な感じです。
昔はこういう安定した中間層が今よりずっと多かったでしょうし、若年層の比率も高かったという事もあって、呑気で明るくて元気な雰囲気が伝わってきます。
爽やかで知的な新人OL、美和子(杉葉子)
美和子は、とある編集社に入社したばかりの新入社員です。
その面接の様子は、ストレートな物言いと堂々とした態度で面接官を圧倒するという、昨今の就活ではあまり見られなそうな光景です。
そして彼女に採用が決まった理由は「第一印象」としか思えず、どう見てもスキルや学歴云々では無さそうです・・・。
美和子はスラリとした細身のスタイルで清潔感があり、ハツラツとしていて理想は高く持っています。
年齢が同じくらいの野崎(池部良)などは彼女から見たら少し幼く見え、美和子はどちらかと言えばいかにも大人の男性といった感じの編集長・野呂(山村聡)の方に興味を持ちます。
野呂は奥さんを亡くし、いまは母親と子供たちとの暮らしです。
美和子は野呂の家に出入りするようになり、何かと手伝いなどをしながら母親や子供たちと仲良くなって行くのでした。
ゴージャスな美人のお姉さん、信子(木暮実千代)
美和子にはお姉さんの信子がいて、信子夫妻と同居しています。
信子は世間知らずのお嬢様育ちですが、最近は実直すぎる夫がちょっと物足りない様子です。
手持ち無沙汰になった信子は、子供の学校のPTA役員になって活躍し始めます。
そこで同じ役員の石山(上原謙)と仲良くなるのですが、この石山がどこからどう見ても超「怪しい」のです。
まず、いわゆるPTA役員とは程遠い印象です。
そしてキザで(美しい)女性には妙に優しく、絡んできたチンピラと派手にケンカしたりします。
どうやら石山は相当なプレイボーイで、バーのマダムのパトロンもしているようです。
そして世間知らずの奥様・信子を虎視眈々と狙っているのです・・・。
信子が今一番力を入れているのは、子供の教材費集めのダンスパーティーの開催です。
信子はこういった席に映えるタイプの美人で、たちまちパーティーの華になってしまいます。
そして、そこには石山がパトロンになっているバーのマダムまで現れ、石山に淡い想いを寄せている信子に対して釘を指すのでした。
姉妹たち、それぞれの冒険
信子の石山への想いは だんだん大きくなるし、信子や石山のような二人はPTAというコミュニティの中ではあまりにも目立つ存在で、何かと陰口を叩かれるようになってしまいます。
プレイボーイの石山も、今回は本気で彼女に恋をしてしまったようで、いつのも調子が発揮出来ません。
高原の静かなレストランに信子を誘った石山は、珍しく熱くなりすぎて強引なアタックをして信子にショックを与えてしまいます。
信子は店を飛び出しますが、そこで運悪く夫の知り合いと出くわします。
別に浮気をしている訳ではありませんが、信子にとっては心の浮気であっても気が咎めて仕方がありません。
小さな事にもビクつくようになり、罪の意識に耐えかねた信子は夫に洗いざらいをぶちまけて泣いて謝り、PTAの仕事を辞めることで事なきを得ました。
一方美和子は、野呂との結婚を意識するようになり、自分から愛の告白をします。
ところが野呂は、本気で相手にしてくれませんでした。
怒った美和子は「女が真剣に告白しているのにひどい」と詰め寄ります。
ところが美和子は、野呂に厳しい調子で断られてしまいます。
野呂は「君はまだ若いのに、人がこしらえた安定した家庭を引き継いで楽をしようとしている怠け者だ!」と美和子を叱り、若い人は若い者同士で一から家庭を築いていかなければならないのだと言います。
野呂から愛されているものとばかり思っていた美和子はショックを受け、彼女は初めての失恋を経験するのでした。
1952年公開
映画では職場の同僚や上司だけでなく、姉妹や叔父から行きつけのバーのマダムまでが主人公を通して交流するという、オープンで不思議な人間関係が広がっていました。
でもいくら物語とはいえ、その設定がまかり通るような開放的な時代だったのではないか?とも思いました。
海に山にとハイキングへ出かける中での「グループ交際」なるものも、この時代に流行ったようです。
恋愛や交際の形も時代の流れでどんどん変化していくものですが、それもひとつの文化として「違い」を楽しむのも古い映画を見る醍醐味かもしれません。
ちょっと気になったのが、オールドミスの私生活の様子です。
定食屋に通い、タバコをたしなむ女史の姿は、今ではべつに珍しくない光景だと思います。
おもいっきり「ああはなりたくない」といった対象として描かれている訳ですが、開放的な雰囲気になってきたとはいえ、女性の社会進出についてはまだ保守的だったようです。
コメント
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はじめまして。石中先生の映画について調べていたらたどり着きました。私も旧作邦画が好きでブログ記事大変楽しめました。これからも楽しみにいています。丘は花ざかり 未見です。鑑賞したいものです。
コメント頂き、有難うございます。
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