「風の中の子供」は、ある経営者の父親を持つ腕白小僧の、試練の物語です。

この物語を見て一番心に響いたのは、親子の信頼関係の強さでした。
幼い息子が、父親が会社で四面楚歌の状態になっているのを目撃しても、警察にしょっぴかれて行くというショッキングな場面に遭遇しても、父への信頼が揺るがない様子には心を打たれます。

父親も言い訳がましい事は一つも言わず、ただ黙っています。
子供の年齢の割に父親には静かな貫禄があって、子供たちも尊敬しつつ父親を慕っているのが しみじみと伝わってきました。

逆に小賢しい資本家の息子が、親の威信を借りてガキ大将を打ち負かそうとするのを見ていると、やっぱり子供たちってガッツリ親の事を観察しているんだなあ、と思いました。

腕白で行動力のある弟、三平(爆弾小僧)

三平は、お兄ちゃんと二人兄弟の結構やんちゃな弟です。

仲間たちと川へ泳ぎに行って、ふんどし(今で言う海パンです)を忘れて泳ごうとしない子に「いいからお前も来い!」と言いますが、帰ろうとするのを見て全員で追いかけたりします。
勉強は嫌いで、『類猿人ターザン』のターザンが大好きな小学1年生です。

ある日三平は、いじめられっ子に「お前の父ちゃんは、会社を辞めさせられて警察に連れてかれるんだ」と聞かされ、頭にきてその子を殴ってしまいます。
三平はお父さんが大好きなのですが、お父さんは何だか元気がありません。
どうやら本当に会社を辞めたのだと思った三平は
「お父さん、あんな会社いらないよね。また新しいでっかい会社を作ればいいよ」
と励まします。

ところがお父さんは、本当に警察に連れて行かれてしまいます。
お母さんは働きに出なければならなくなり、三平は叔父の家に預けられる事になるのでした。

三平は気が強い子で決して泣きませんが、本当は家が恋しくてしょうがありません。
高い木に登ったり、たらいに乗って川を降ろうとしたりする度に連れ戻され、叔父さんに叱られますが、今度は「カッパに会いに行く」と池に向かい、そのまま行方不明になってしまいます。
村中を大騒ぎにして探し出された三平は、曲馬団(サーカス)で曲芸を練習している所を見つけられるのでした。

三平の無鉄砲さに困り果てた叔父夫婦は「私らの手には負えない」と、母親の元へ彼を返しに行きます。
母親が「どうしてそんなマネをするのか?」と尋ねると、三平は曲馬団が家の方へ行くと聞いたから、仲間に加わったのだと言います。
お母さんは、小さな三平が可哀想になりますが、兄の善太も叔父の家に行くのは嫌だと言うので困ってしまいます。

何かと弟をバカ呼ばわりする兄、善太(葉山正雄)

お兄ちゃんの善太は、勉強も出来るし真面目で優等生タイプです。

三平の好みが「ターザン」なのに対し、善太は「ロビンソン・クルーソー」の物語にハマっています。
大人の言う事や世の中のルールをよく飲み込んでいて、上手に世間を渡っていけそうな賢さを持った小学五年生です。

ただ善太はけっこう繊細な感じで、三平が叔父の家に行ってしまった後、一人でかくれんぼのマネをしながらシクシク泣いているのでした。
いつも弟とは喧嘩ばかりしていたのに、本当はとても仲良しだったようです。

本当の勇気を発揮した三平

お母さんは三平を預けて、善太と二人で病院の住み込みの仕事をしようとしていましたが、仕方なく三平と二人で病院に赴きます。
ところが病院からは「この子は小さすぎる」と断られてしまうのでした。
途方に暮れたお母さんは「ねえ三ちゃん、お母さん死んだらどうする?」などと言い、シクシク泣き出してしまいます。

何があっても負けない強気の三平も、お母さんの絶望と涙には勝てません。
三平が意を決して「僕、叔父さんの所へいく。もうイタズラもしないよ」と宣言する所は、小さな男の子ながら頼もしい感じがします。

ところが三平が決心したすぐその後、お父さんの罪の疑いが晴れて全ては元通りになります。
三平は最初からお父さんの事を信じていたので、嬉しくてしょうがありません。
でも、久しぶりでお父さんと相撲を取ろうとして懐に飛び込んだ瞬間、三平は堰を切ったように泣き出します。

強がってはいても小さな胸を痛めていて、急に緊張が解れたのだと思うと可哀想になります。
それと同時に、やっぱりお父さんはとても頼もしくて安心感があるのでした。

清水宏さんの監督映画


1937年公開

三平が「今度のオリンピックにターザンが出るんだぞ」と言っていますが、ターザン役のジョニー・ワイズミュラーは水泳選手でもあり、オリンピックの金メダリストだったのですね。
布団の上で水泳のマネをしたり、それに実況中継を付けるという遊びは、たぶん誰もがかつてはやったお馴染みの光景で、懐かしいものがありました。

一方で、子どもたちが徒党を組み、フンドシ姿で川遊びをしたり、木に登ったりするのは遠い昔のおとぎ話のような光景で、今となっては映画の中にしか存在しないような気がします。
町医者である叔父が馬に乗って往診する姿もなかなか興味深い光景で、ちょっと風格がある感じがしました。

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